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中垣俊之 (教授) Toshiyuki Nakagaki


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生物の行動は、環境情報を取り込んだ後に得られる情報処理のアウトプットであり、その特性やしくみの解明は自然知能の根本問題です。現存する生物は自然淘汰によって高度に洗練された情報機能を有しており、天与の情報機械といえます。その基本設計を解明するために、いわばその初号機たる単細胞生物に注目しています(注1)。その方法論として、細胞の行動を力学の運動方程式で記述することによって、身体運動制御と問題解決知能のアルゴリズムを抽出します。これは、生物の「くせ」に根ざした情報技術の開拓であり、将来的にはヒトの思考や行動に馴染みの良い知能機械の設計指針をもたらすと期待しています。(注1:ならびに二号機三号機たる進化的初期に登場した生物にも徐々に対象を広げつつあります)

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仕事の紹介


生物の行う情報処理を研究しています。ヒトも含めて生き物は、すばらしい能力を兼ね備えています。長い年月をかけた進化による洗練の賜物でしょう。たとえば、野球選手はフライボールの落下点に向かって走っていけます。いとも簡単にやってのけますが、どのような方法で着地点を割り出しているのか、実はまだよくわかっておりません。ニュートンの運動方程式を解いてボールの弾道計算をしている、とは思えませんから、何か別の方法があるはずです。一体どのような仕組みなのでしょうか? 情報処理の生き物らしさとは? 翻って、単細胞生物を見てみましょう。単細胞とて、生きたシステムですから、生き物らしい情報処理をして然るべきです。単純な分、生き物らしさの本質に迫りやすいかもしれません。私たちは、このような考えに基づき、比較的単純な生き物を中心に、その情報処理を調べています。どれほど難しい問題を解くことができるのか? その解法はどうか? さらに、単純生物の研究を軸に、ヒトも含めた生物全般に共通する情報処理の特徴抽出にも取り組んでいます。「単細胞」などと侮ることなかれ、多くのことを学ぶことができるのです。

粘菌行動の賢さ

粘菌は巨大なアメーバ型生物でありながら、迷路の最短経路を探し出す計算能力を持っていました。環境条件があちこちで異なるような場所では、全体を通じて危険度が最小になる経路を探し出すこともできました。あちこちに小さい餌場所が点在する場合では、多目的(経済性、耐故障性、効率)に最適化されたネットワーク構造を作りだし、なるべく多くの餌場所にありつくことができました。これらは、単細胞レベルでの予想以上の賢さを示す証拠として注目されています。その解法はいかに? 粘菌の動きを実験で調べ、粘菌の計算方法を再現する数理モデルを構成することに成功しました。粘菌の計算能力についてさらに研究を押し進めています。

工学的な応用

粘菌の解法は、新しい最適化アルゴリズムとして工学的な応用が期待されています。一例として、カーナビがあげられます。現行のダイクストラ法を補うような、変動する渋滞状況に柔軟に対応する性質や大体良い経路をいくつもあげる性質が示されています。また、多目的最適化能力の応用例として、都市間交通ネットワークのデザインにも援用できるかもしれません。一般的な最適化手法として、現実の粘菌に拘る事なく、より洗練されたアルゴリズムへと開発することも興味深いテーマです。

記憶学習、迷い、心理

生き物らしい情報処理の一面として、記憶学習能力などのいわゆる高次脳機能があげられます。それらは既に単細胞の段階で既に存在するようです。たとえば、粘菌は、何度も周期的に刺激を受けますと、次の刺激のタイミングを予測するようになります。その後しばらくしてから再び刺激をしますと以前経験した刺激の周期を思い出すこともあります。このようなリズム性の時間記憶能力は、体内の代謝反応が作り出すリズムの自然な性質として表れうる事がわかりました。この種の時間記憶は、生物界全般にみられるものと予想しています。また、粘菌は、弱い毒に遭遇すると、しばらく立ち止まった後、乗り越えるか、引き返します。どちらの行動をとるかは、個体によって異なります。個性や迷いの表れと思われます。これら比較的高次な情報処理機能の仕組みを、反応拡散方程式と呼ばれるある種の運動方程式(偏微分方程式)で捉えています。更なる高次心理的な行動の探索と機構解明を目指しています。

複雑知能システムとしての生物の集団挙動

粘菌は巨大な多核単細胞体ですが、多数の単核単細胞の集団と見ることもできます。同質な細胞からなる集団が、集団レベルでは思いもよらぬ機能性を発揮しているのです。生物システムでは、多様な集団、例えば、蟻や魚や鳥の群れ、歩行者の流れ、脳内の神経細胞集団など、があります。集団挙動として初めて表れる機能性は、「創発」現象として複雑系科学の中心テーマになっています。複雑系科学の進展に伴い、実体の違いを超えて通底する基本数理構造があるのではないかと言われています。生物に特有の「適応性」をキーワードにして、創発現象を統一的に捉える試みを続けています。

身体、運動、知

生物システムの「運動」は、情報処理のアウトプットであり、環境へのはたらきかけです。脳に代表される生物の情報処理システムはすばらしいものですが、現実世界との関わりを持つのは身体であり、身体と情報系の相互作用が興味深い問題としてあります。もとより、進化の歴史を俯瞰してみますと、身体系と情報系は元来不可分のものでした。この観点から、そもそも運動の制御が進化的にどのように発達してきたかを、アメーバ、線虫、ウジ虫、プラナリア、貝、芋虫、ミミズ、ヘビ、ヤスデなど、一連の運動形態の多様性を比較して、メカニクスの観点から捉え直すことを目指しています。

科学のよろこび

私たちの研究成果は、 NATUREやSCIENCEといった一流の科学雑誌に何度か紹介され、その質の高さが示されています。また、米•独•仏•英•伊など、各国のTV、新聞、雑誌などでもしばしば紹介され、関心の目が向けられました。2008年には裏ノーベル賞とも呼ばれるイグノーベル賞(認知科学賞)を受賞し、また2010年には爆ノーベル賞(NHK番組「爆笑問題の日本の教養」主催)のほか函館市長賞や二度目のイグノーベル賞(交通計画賞)を受賞し、研究のユニークさが強調されました。これらの成果は、多くの科学者の力を借りて、国際的、国内的な共同研究プロジェクトを押し進めてきた賜物です。また、研究テーマの身近さ、なじみやすさから、小学•中学•高校生や市民への科学コミュニケーションの機会も多数頂き、積極的に取り組んで参りました。科学は、知的なエンターテイメントであり、それだけでも人間に喜びをもたらすものだと思っています。多くの方々と、科学のすばらしさを分かち合えることは私たち自身の喜びでもあります。

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