西上幸範 (Yukinori Nishigami)
専門分野
原生生物、細胞運動、細胞生物学、生物物理学、人工細胞、アクチン、ミオシン
研究内容
原生生物の世界は多様性に満ちている。近年になって実験的に遺伝情報を得ることが容易になったことから、この情報を用いた生物の系統分類が進んでいる。この分類によると、これまで真核生物の石柱を担ってきた動物や植物、菌類といった生物は実は真核生物の多様性の一部でしかないことが分かってきた。では真核生物の多様性を担う生き物はどのような生物だろうか。面白いことに、実は真核生物の多様性はアメーバやゾウリムシといった原生生物の多様性にほとんど等しいことが分かってきた。また環境中でもこの生物は非常に重要な役割を果たしていることが分かっており、地球環境を理解するためには原生生物のことを理解することが必要不可欠である。この様に原生生物は私たちヒトにとって大変重要な生物ではあるが、原生生物は非常に小さく肉眼では見えないことや、ほとんどの種が培養困難であるといったことから、これらの生物に関して人類が分からないことはまだまだ沢山残されている。私はこのような原生生物のなかから特に面白い行動や動きをするものに興味をもって研究を進めている。原生生物の行動というと少し可笑しく聞こえるかもしれないが、目や耳や脳すらない原生生物は自身の生存のためにまるで考えているかのような行動を示す。例えばアメーバは餌に向かって仮足を伸ばすが、DNAを傷つける可能性のある光からは逃避する。またゾウリムシは餌の豊富な障害物近くを泳ぐことが多い。これらの行動は神経によって制御されているわけではないが、観察する我々からするとまるで考えているようにしか見えない。私はこの考えてないのに考えているように振る舞う原理を解明することを目標としている。この事を実現するために、細胞の動きを三次元で観察したり、流体シミュレーションを駆使したり、人工細胞を作ったり、手法にこだわらず多くの共同研究の方々に助けてもらいながら研究を続けてきた。興味のある方や一緒に研究したいと思った方は気楽にご連絡い頂ければと思います。
研究業績
(最新の内容はリサーチマップを参照)
原著論文
- “Influence of cellular shape on sliding behavior of ciliates“
Yukinori Nishigami†, Takuya Ohmura†, Atsushi Taniguchi, Shigenori Nonaka, Junichi Manabe, Takuji Ishikawa, Masatoshi Ichikawa (†equally contributed)
Commun. Integr. Biol., 11, e1506666 (2018) - “Simple mechanosense and response of ciliate motion reveal the intrinsic habits of ciliates“
Takuya Ohmura†, Yukinori Nishigami†, Atsushi Taniguchi, Shigenori Nonaka, Junichi Manabe, Takuji Ishikawa, Masatoshi Ichikawa (†equally contributed)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 115, 3231 (2018) - “The neck deformation of Lacrymaria olar depending upon cell states“
Ryuji Yanase†, Yukinori Nishigami†, Masatoshi Ichikawa, Tohru Yoshihisa, Seiji Sonobe (†equally contributed)
J. Protistology, 51, 1 (2018) - “Non-periodic oscillatory deformation of an actomyosin microdroplet encapsulated within a lipid interface“
Yukinori Nishigami†, Hiroaki Ito†, Seiji Sonobe, and Masatoshi Ichikawa (†equally contributed)
Sci. Rep., 6, 18964 (2016) - “Protein import complexes in the mitochondrial outer membrane of Amoebozoa representatives“
Dorota Buczek, Małgorzata Wojtkowska, Yutaka Suzuki, Seiji Sonobe, Yukinori Nishigami, Monika Antoniewicz, Hanna Kmita, Wojciech Makałowski
BMC Genomics, 17, 99 (2016) - “Wrinkling of a spherical lipid interface induced by actomyosin cortex“
Hiroaki Ito†, Yukinori Nishigami,† Seiji Sonobe, and Masatoshi Ichikawa (†equally contributed)
Phys. Rev. E, 92, 062711 (2015) / arXiv:1505.04371 - “Reconstruction of active regular motion in amoeba extract: Dynamic cooperation between sol and gel states“
Yukinori Nishigami†, Masatoshi Ichikawa†, Toshiya Kazama, Ryo Kobayashi, Teruo Shimmen, Kenichi Yoshikawa, Seiji Sonobe (†equally contributed)
PLoS ONE, 8, e0070317 (2013)
総説・解説など
- “Active materials integrated with actomyosin“
Hiroaki Ito, Masahiro Makuta, Yukinori Nishigami, and Masatoshi Ichikawa
J. Phys. Soc. Jpn., 86, 101001 (2017) - “ブレブ駆動型アメーバ運動機構 (Mechanism of bleb-driven amoeboid locomotion)“
西上幸範、伊藤弘明、市川正敏
Jpn. J. Protozool, 49, (2016) - “試験管内再構築系を用いたブレブ駆動型アメーバ運動機構の研究 (Studies on bleb-driven cell locomotion using reconstituted systems)“
西上幸範、伊藤弘明、市川正敏
植物科学の最前線 (BSJ-Review), 6, 82-91 (2015) - “ImageJを用いたデジタル画像処理 ~ImageJの基本操作~“
西上幸範
原生動物園, 1, 15-20 (2010)
招待講演
- Sliding behavior of ciliates near a wall
Yukinori Nishigami
Joint Meeting of the Korean Society of Protistologists and the Japan Society of Protistology, Jeju, Korea, 2018.07 - Behavior of Amoeba proteus on constant photo-irradiation
西上幸範
日本生物物理学会第55回年会シンポジウム, 熊本市,2017.09 - Celluar shape deformation and locomotion of free-living amoeba, Amoeba proteus
Yukinori Nishigami
JSP-KSOP joint meeting 2015, Tokyo, Japan, 2015.11 - 自由生活型アメーバの単離細胞膜が示すRolling構造と細胞膜三次元曲率に関する研究
西上幸範、谷口篤史、野中茂紀、園部誠司、市川正敏
日本植物学会第78回大会シンポジウム, 川崎市,2014.09 - 自由生活型アメーバAmoeba proteusの運動機構
西上幸範
第84回日本寄生虫学会大会シンポジウム, 三鷹,2014.03 - 人工アメーバを創る
西上幸範
原生動物学会若手の会シンポジウム, 奈良,2011.11 - アメーバ運動するタンパク質
西上幸範
第1回原生動物学会若手の会勉強会シンポジウム, 岩国,2010.04 - 新規モデル系を用いたアメーバ運動の解析
西上幸範
日本原生動物学会若手の会ワークショップ, 石巻,2009.10
外部資金
- 2018.10-2023.03
次世代研究者育成プログラム - 2018
日本科学協会 海外発表促進助成 - 2017.04 – 2018.09
科研費 日本学術振興会特別研究員 (PD) 奨励費
「人工運動細胞を用いたブレブ駆動型アメーバ運動におけるアクチン高次構造の機能解明」 - 2017
京都大学教育研究振興財団 国際研究集会発表助成 - 2014.04 – 2015.03
日本科学協会 笹川科学研究助成
「Amoeba proteusの単離細胞膜が示すRolling構造に関する研究」 - 2010.04 – 2013.03
科研費 日本学術振興会特別研究員 (DC1) 奨励費
「新規モデルシステムを用いたアメーバ運動機構の解明」
受賞歴
- 2018
第51回日本原生生物学会大会ベストプレゼンテーション賞 - 2014
日本原生生物学会奨励賞 - 2013
BioLegend/Tomy Digital Biology Research Grant Program
学会活動
所属学会
- 日本原生生物学会
- 日本生物物理学会
役員など
- 2018.10 – 現在
日本原生生物学会評議委員 - 2014.10 – 現在
日本原生生物学会編集委員 - 2009.11 – 2011.10
日本原生動物学会若手の会 会長 - 2007.11 – 2009.10
日本原生動物学会若手の会 副会長